生まれつき、あまり天気を気にするほうではないので、冬の天気については、「今日は寒い」か「今日は割と暖かい」ぐらいの区別しかない。
たしかに、昨夜から「今日は寒いなぁー」とは感じていたが、こういうことか。
窓を開けると雪が舞い散り、地面は既に白一色に覆われている。肩を丸めて腕を組み、すっかり起伏を失った景色をしばらく観賞するが、足の冷たさが我慢出来ずにつま先立ちで階段を駆け下りる。
何はともあれ装甲を固め、リビングのカーテンを開けて炬燵に滑り込み、改めて、熱いお茶をすすりながら年に数度しか見られない「三重の雪」をゆるゆると堪能しよう。
…と、階上で窓の開く音が聞こえ、「うわぁ、真っ白やでぇ~!!」と叫ぶ人。そういうことを叫ぶのは、一番に起きた者だけに与えられる特権であるということを知らんらしい。かくして私の、「完全無音雪中すずめ観賞タイム」は、2分と持たずに打ち砕かれた。
チャイコフスキーの「くるみ割り人形」は、その第一幕の終り「雪の精の踊り」にたどり着くことなく雑音に紛れる。
北国の方々には怒られるかも知れないが、この辺では、雪はどちらかと言って人を屋外へと引き出す引力を持っている。庭に出れば、何はともあれ一つかみ分の雪玉を作り、適当な的を目掛けて投げるのが作法とされている。
「さて」と、ちょっとした残務を片付けに職場に向かおうと、玄関を出てアプローチを車庫の方に向かって歩いていると、「バスッ」という音ともに白い湿り気のある粉が視界の端で爆ぜた。見れば、ニヤニヤしながら中学では一応野球部でピッチャーをやっていたデカい「男の子」が次の一撃を装填中である。
「バシャッ」程度ではなく、「バスッ」と重い音を立てた雪玉は、恐らく彼の狙いとは違うところに命中したのである。もし、「バスッ」が狙い誤って私の顔面に命中していたら…そう思うと、お手並みはまだまだなくせにお作法にはだけは忠実な「男の子」に本気で腹が立った。ま、その(顔面に命中)場合、今頃彼は、雪の中に埋もれていることだろうが。
それにしても、完全にネタ詰まりのところで雪を降らせるなど、まさに「天は我を見放さず」…とも考えたがそれは違う。むしろ、全く意味の無い試練を課されているようでむしろ恨めしくさえ思う。
…いや、独り言だ。


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by Bero
父の命日に想ったこと